学生症候群とはいわゆる「夏休みの宿題ギリギリまでやらない」問題のことです。
ビジネスにおいても様々な弊害を生み出す学生症候群とは何なのか、そしてその解決法を紹介します。
目次
(1)学生症候群とは?
学生症候群とは、依頼された仕事などを締め切りギリギリにならないと着手しない傾向のことを言います。
もともとは学生が、
・夏休みの宿題を最終日ギリギリにならないとやらない
・テスト勉強をギリギリにならないと始めない
・課題の提出が常に締め切り日ギリギリになる
という傾向があることから名づけられました。
しかしこの問題は学生だけではなく、社会人の多くにも見られる傾向です。
・プレゼンの資料は前日に作り始める
・締め切り日ギリギリに書類を提出する
・資格取得ための勉強も試験が近づかないとやらない
あなたの周りにも学生症候群の傾向がある方、多いと思います。
私の所属する会社のグループも、なんと8人中5人が学生症候群です。
(2)学生症候群の問題とは?
学生症候群には大きく分けて2つの問題点があります。
①緊急案件が生じると締め切りが守れなくなる
学生症候群の人は締め切り日があるものに対してはギリギリまで手をつけません。
何も起こらなければ良いのですが、締め切り日ギリギリに予測できないような緊急案件が生じると、それに対応するのに時間がとられ結局締め切りに間に合わなくなってしまいます。
学生症候群の人の口癖は「あれがなければ締め切りを守れたのに。でも緊急だったから仕方ないよね」になります。
また緊急案件が生じなくても、いざギリギリになって資料を作り始めてみると、思ったより時間がかかり締め切りを守れなくなるという事態も起こります。
締め切りが守れないと、それをフォローするのに余計な時間がとられ、それにより時間がなくなり他の仕事の締め切りも守れなくなる、という悪循環に陥ります。
どちらにも共通して言えるのは、「未来を完璧に予測するのは不可能である」ということを考慮にいれていない点にあります。
未来は何が起こるかわからないので、常に予測不能な事態や緊急案件が生じる可能性を考慮にいれて、余裕をもって仕事をすることが必要です。
②プロジェクト完成までの時間が余計にかかる
複数人や複数のチームが共同して行うプロジェクトの場合、各人や各チームにそれぞれ作業と締め切りが与えられます。
そしてその締め切りには大抵、ある程度のバッファー(余裕)が設けられています。
このバッファーが与えられると、学生症候群のある人やチームでは通常ならもっと早く作業が終わるのにもかかわらず、与えられたバッファーを使い切り結果作業が通常より長くなります。
Aチームの作業⇒Bチームの作業⇒Cチームの作業のように、前の作業が終わらないと次に進めない場合、各作業に割り当てられたバッファーが積み重なり、結果プロジェクト完成までの時間が大幅に上乗せされてしまいます。
(3)学生症候群の解決法
学生症候群に問題があることはわかりましたが、
「早くやればいいのはわかっているけど他の仕事がたまっているし」
「自分は締め切りギリギリにならないとやる気がおきないんだ」
という人もいるかと思います。
学生症候群の問題は小学生の夏休みの宿題の取り組み方にまでさかのぼるため、なかなかその年からの習慣を変えることは難しいかも知れません。
しかし学生症候群を解決する方法はちゃんとあるのです。
①締め切り日とは別に、取り掛かる日、完成させる日を手帳に書く
学生症候群の人は締め切りが与えられた時、手帳に締め切り日しか書かかない傾向があります。
この方法では締め切り日当日になって慌てて思い出し、急いでやるも結局間に合わない、という事態が生じてしまいます。
手帳には締め切り日だけでなく、取り掛かる日、完成させる日も書くようにします。
例えば12月14日(金)が締め切りの仕事を12月3日(月)に依頼された場合、
・12月5日(水) 資料作り始め
・12月11日(火) 資料完成
・12月12日(水) 最終チェック後提出
・12月14日(金) 資料締め切り
というように締め切り日だけでなく作り始めの日や完成させる日、提出する日など、細かく分解して手帳に書くようにするのです。
こうすることでギリギリになってから取り掛かったり締め切り日ギリギリになって提出したりするのを防ぐことができます。
②締め切り日を半分に設定する
学生症候群の人は締め切り日を意識しますが、締め切り日までどのくらい時間があるのかという期間は意識しない傾向にあります。
この期間が意識できるようになれば、仕事を終わらせるのに必要な時間の予測精度が上がり、結果締め切りを守りやすくなります。
締め切りまでの期間を意識できるようにする手法が締め切り日を半分にすることです。
上の例え同様、12月14日(金)が締め切りの仕事を12月3日(月)に依頼された場合、締め切り日を自分の中で半分の12月7日(金)に決めてしまうのです。
こうすることで早めにとりかかれるだけでなく、半分に設定した際に締め切りまでの期間を意識することができるようになるため、時間の予測精度が上がり締め切りを守りやすくなるのです。
③プロジェクトの各作業にはバッファーを設けない
プロジェクトにおいては、各作業にはバッファー(余裕)を設けずプロジェクト全体の最後にだけバッファーを設けるようにします。
各作業は最短で行われ完成次第次に送られるため、バッファーによって生じていた作業と作業の間の無駄がなくなり、最短でプロジェクトを完成させられるようになります。
仮にどこかの作業で問題が発生し予想より遅れたとしても、それはプロジェクト全体のバッファーによってカバーされます。
各作業ごとにバッファーを作るとそれぞれが学生症候群によってバッファーを使いきってしまい、結果プロジェクトは通常の時間+各作業のバッファーの合計時間になってしまいます。
プロジェクト全体にのみバッファーを作り各作業にはバッファーを設けないことで、プロジェクトは通常の時間+問題が起きた作業によってのみ使われたバッファーの合計時間となり、結果これがプロジェクトを最短で終わらせることになるのです。
学生症候群からロケットスタート時間術に切り替えよう
学生症候群の対義語に「ロケットスタート時間術」というものがあります。
これは元マイクロソフト社員の中島聡氏が提案している仕事術で、締め切りに関係なく依頼された仕事はすぐやる、というものです。
「夏休みの宿題を最後にやる派」だった人には、なかなか厳しいかも知れません。
しかし今回紹介した、
(1)締め切り日とは別に、取り掛かる日、完成させる日を手帳に書く
(2)締め切り日を半分に設定する
などの方法を使って、少しずつでも「夏休みの宿題を最初にやる派」の「ロケットスタート時間術」に切り替えて、仕事をもっと効率化できるようにしていただければと思います。
以下参考にした本です。