先日営業職の後輩が顧客への愚痴をこぼしていました。
「こっちは論理的に説明しているのに、相手が感情的になって全然話が進まない」
と。
確かにあるあるですよね。
こちらはちゃんと理由を説明しているのに、相手が無茶なことを言ってきて話にならない。
正直やってらんないですよね。
ところがこれ、どう考えても相手に非があるように見えて、実はこちらに非があるんです。
「論理的に説明しているのにダメ」
なのではなく、
「論理的に説明だけして相手の感情を受け入れていないからダメ」
なのです。
今日はそんなコミュニケーションにおいて大事な"相手の感情を受け入れること"を、名著『ピープル・スキル』を読んでの考察を交えつつお話したいと思います。
『ピープル・スキル』における3つの対人スキル
『ピープル・スキル 』は職場の対人関係を専門に扱うコンサルティング会社リッジトレーニング社の創業者ロバート・ボルソン氏の著作です。
彼の顧客にはamazonやファイザーなど世界の一流企業が名を連ねています。
そんなロバート・ボルソン氏は、対人コミュニケーションには3つのスキルが必要だと説いています。
傾聴(リスニング)スキル
自己主張(アサーション)スキル
対立解消(コンフリクト・マネジメント)スキル
引用元:『ピープル・スキル』(ロバート・ボルトン, 宝島社)
①傾聴スキル:相手の話・意見を聞くこと、また聞いていることが相手にちゃんと伝わること。特に相手の感情を受け入れること。
②自己主張スキル:こちらの主張を正確に、攻撃的にならずに伝えること。
③対立解消スキル:お互いの主張が食い違う場合は、お互いの真の目的を理解した上で、両方が満足いく解決策を見つけること。
①傾聴スキルは相手の話を理解するだけでなく、"自分のことを理解してくれている"と相手に思ってもらえるような聞き方をするのがとても大事です。
本書でも、
話し手が何より強く求めるのは何より強く求めるのは、、"相手の心がここにある"という心理的実感だ。つまり、自分とともにいてほしい、心から寄り添ってもらいたい、と望んでいるのである。
引用元:『ピープル・スキル』(ロバート・ボルトン, 宝島社)
とあります。
そのため、特に相手の感情に注意を向け、相手の感情を受け入れる表情や相槌、返答を行うのが非常に重要となります。
またこれら3つのスキル、もちろんどれも大事なのですが、最も頻繁に使用するのは①傾聴スキルです。
何故なら自己主張する際も、
①まずは相手の話を聞く⇒②自分の意見を伝える⇒①伝えた上でそれに対する相手の意見を聞く
というように傾聴に戻りますし、対立解消の場合も常に傾聴スキルを使い続けます。
すなわち常に"相手の感情を受け入れ続けること"が対人関係では重要だということが『ピープル・スキル 』から読み解くことができるのです。
アリストテレスも感情を重視
この"相手の感情を受け入れること"の重要性ですが、実は昔から知っている人は知っており対人コミュニケーションに使っていました。
例えば古代ギリシャの哲学者アリストテレスも、人を動かすためには、
エトス(信頼)⇒パトス(共感)⇒ロゴス(論理)
の順番で行え、という言葉を残しています。
まずは相手の信頼を勝ち取り、相手の感情を受け入れ共感し、こちらの想いに共感させてから、初めて論理的に説得せよ、と説いています。
冒頭で述べた私の後輩の営業マンも、論理的に説明する前に、まずは顧客の感情を受け入れてあげることが必要だったのですね。
ちなみにこの順序は営業や説得、交渉以外でも同じです。
例えば部下の育成。
カリフォルニア大学のチャード・バンドラーとジョングリンダーが心理学と言語学を組み合わせて作ったNLP:Neuro Linguistic Programing(神経言語プログラミング)においても、
ペーシング(共感)⇒ラポール(信頼)⇒リーディング(導く)
の順番でコーチングを行うこととされています。
何をやるにもまずは相手の感情を受け入れてからじゃないと、信頼関係も作れないしモノを教えることもできない、という訳ですね。
※NLPに関しては以下の本が非常にわかりやすくオススメです。
私の会社でも教える立場になった人には必ず貸しています。
男性は共感が苦手?
ではなぜ昔から大事だとわかっている"相手の感情を受け入れること"ができない人が多いのでしょうか?
実はかくいう私もこれがすごく苦手で、普段かなり意識して"相手の感情を受け入れる"スキルを使っています。
実は男性は脳の構造的に、論理は得意なのですが共感はとても苦手なのです。
これは我々人類が生まれて以来、男は狩りをするのが仕事であったことに起因します。
男同士のコミュニケ―ションはどうやったら獲物を仕留められるかがメイン、すなわち論理的な解決策を求めるのが目的です。
対して女は仲間の女達と共に住み家を守るのが仕事であったため、危険な情報などを共有するために相手と感情も共有する必要がありました。
冒頭で話した私の後輩も男性脳の持ち主なので、やはりどうしても感情より論理が先行してしまうのだと思われます。
実際私も男性で、かなり論理先行型人間なので、論理を振りかざしている時はよく顧客や職場の人間と争っていました。
しかし意識的にまず相手の感情を受け入れるようにしてから、争いはほとんど起こらなくなり、逆に相手が私の意見を受け入れてくれることが多くなりました。
(相手の感情を受け入れてあげると、例えこちらの論理が破綻していようと相手がこちらの意見を飲んでくれる時もあるくらいで、"まずは感情を受け入れること"の効力のすごさがわかります)
※男女の違いに関しては以下の本が非常にオススメです。
記事にもしていますのでよろしければ読んでみてください。
ちなみに私はこの本を読んでから妻との喧嘩が0になりました(笑)
まずは相手の感情を受け入れること
論理的に話すのはもちろん大事です。
しかしそれだけでは、相手を動かすことはできません。
ビジネスにおいてもプライベートにおいても、"まずは相手の感情を受け入れること"は非常に大事であることを『ピープル・スキル 』を読んで改めて認識しました。
顧客や恋人が論理的でなくて困っているという方、ぜひ"まずは相手の感情を受け入れること"をやってみてはいかがでしょうか?
あなたの対人関係がより良いものになることを願っております。
対人関係の本は以下の本もオススメですので、よろしければ読んでみてください。